低用量ピルを服用することで、血栓症を発症する可能性が高まる事が知られています。
特にLEP製剤(低用量ピル)「ヤーズ」は国内で血栓症による死亡例が3例あり、 「自分も血栓症になってしまうのでは?」 「危険なのでピルは飲むべきではない」 と考える方もいるようです。
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ピルによる血栓症を不安に思う方の声
血栓症ってどういう病気?
「血栓」とは、血管内の血小板や血液の塊のことです。
血栓の原因となるのは「フィブリン(Fibrin)」という物質ですが、フィブリンは身体に傷ができた時に固まって止血する役割を持っています。
フィブリンが血管内で固まってしまうと、血栓となってしまい、血流を止めてしまいます。
これを「血栓症」といいます。 血栓症は最悪の場合、命にかかわる重い症状となります。 しかし早期に発見し治療をする事で血栓は消失できますので、低用量ピル(LEP製剤)を服用する方はどのような症状が発生すると血栓症を疑うべきなのか、知っておく事が大切です。
血栓症を疑う症状
低用量ピルを服用していて、次のような症状が出た時は一刻も早く病院へ相談しましょう。
また、その際は医師に「低用量ピル」を服用していることを必ず伝えましょう。
- 激しい腹痛
- 激しい胸の痛み、息苦しい押しつぶされるような痛みを感じる
- 視界が狭い、見えにくいところがある
- 舌がもつれる、意識を失う、けいれん、意識障害が見られる
- ふくらはぎが痛い、むくんでいる、ふくらはぎを握ると痛い、赤くなっている
低用量ピルを服用することで特に「血栓症」のリスクが高まる人
低用量ピルを服用すると、誰でも血栓症のリスクは高まりますが、特に下記に該当する人は「禁忌」となり、ピルの処方はできません。
心血管系疾患のリスクのためピル服用が禁忌となる場合
- 血栓性静脈炎,肺塞栓症,脳血管障害,冠動脈疾患またはその既往歴のある患者
- 35 歳以上で 1 日 15 本以上の喫煙者
- 血栓性素因のある女性
- 抗リン脂質抗体症候群の患者
- 大手術の術前 4 週以内,術後 2 週以内,産後 4 週以内,長期間安静状態の患者
- 脂質代謝異常のある患者
- 高血圧のある患者
ピルと血液凝固 – 日本産科婦人科学会 引用元:http://www.jsog.or.jp/PDF/52/5207-142.pdf
どうしてピルを飲むと「血栓症」になりやすくなるの?
低用量ピル(LEP錠剤)には「エストロゲン」という女性ホルモンが含まれています。 この「エストロゲン」は血液を凝固する(固める)作用があるため、血栓症の発現頻度が高まるといわれています。 そのため、この「エストロゲン」が多く含まれている「中用量ピル」はさらに血栓症のリスクが高まります。
ピルによって血栓症になりやすいものがあるの?
ピルは開発された年代によって第1世代~第4世代と分類されており、世代が新しくなるほど、血栓症のリスクを減らすためにエストロゲンの量が減っています。
しかし、第1世代・第2世代のピルに比べ、第3世代・第4世代のピルのほうが血栓症の発現率が高いという研究報告があり、それについての詳しい理由はまだはっきりとわかっていません。
ピルと血液凝固 – 日本産科婦人科学会 引用元:http://www.jsog.or.jp/PDF/52/5207-142.pdf
世代 | ピル(LEP製剤)名称 |
第1世代 | オーソ・ルナベルLD |
第2世代 | トリキュラー・アンジュ |
第3世代 | マーベロン・ファボワール |
第4世代 | ヤーズ・ヤスミン・ルナベルULD |
「ヤーズ」の血栓症リスクについて
第4世代のLEP錠剤「ヤーズ」は、国内で3例の死亡者がおり、服用を躊躇する方が多いようです。
どのような低用量ピルでも血栓症のリスクはあるのですが、特に「ヤーズ」の黄体ホルモン「ドロスピレノン」には軽い利尿作用があり、これによって体内の水分が少なくなり、血液が濃縮することで血栓症のリスクが高まる可能性があります。
そのため、「ヤーズ」を服用する際は、意識して水分補給を行うこと、デスクワークで座っていることが多い方はこまめに立ち上がり足を動かす等注意して、血液の流れが悪くなる状態を作らないようにしましょう。
大切なのは「血栓症」のリスクに備えること
「血栓症」は早期に発見・治療を行うことで、健康に大きな害を及ぼさなくてすみます。
血栓症のリスクに対しどのように対処したらよいか、また、もし発現した時のために重篤な症状にならない様対策を講じましょう。
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血栓症の症状についてはこちらをご覧ください。患者携帯カードを持とう
医師からピルを処方された際「患者携帯カード」を渡された方もいらっしゃると思います。
これを常に携帯しておきましょう。
口頭でピルを服用していることを伝えられれば良いですが、症状が重く医師に伝えられない場合があります。
いざと言う時のために医師に提示するための「患者携帯カード」を携帯しておくと安心です。
ヤーズ配合錠の「患者携帯カード」(提供バイエル株式会社)
トリキュラーの「患者携帯カード」(提供バイエル株式会社)
マーベロンの「患者携帯カード」(提供MSD株式会社)
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