2017年2月に「ヤーズフレックス配合錠(製造:バイエル株式会社)」が発売開始になりました。
日本では以前から「ヤーズ配合錠」が発売されていますが、違いがわからないという人もいるのではないかと思います。
大きな違いは「服用日数」と「保険適用となる症状」であり、1錠あたりの成分や配合量は全く同じです。
このページでは「ヤーズフレックス」について詳しくお伝えします。
ヤーズフレックスは28錠全て成分の配合が同じである一相性ピルです。
三相性と違い、服用する錠剤の順番を意識せずにすむ事、また生理日の調整も簡単というメリットがあります。
日本の病院では月経困難症と子宮内膜症の治療薬として認可されており、その場合であれば保険適用となります。
ヤーズフレックスの成分
ヤーズには黄体ホルモンと卵胞ホルモンの2種類の合成女性ホルモンが含まれています。この2つのホルモンの働きにより、脳の視床下部や下垂体が妊娠していると判断し、排卵をストップさせます。この作用により子宮内膜の増殖がおさえられ、月経困難症や子宮内膜症の症状が軽減されます。
また、排卵が行われなくなる事で避妊効果も得られます。
ヤーズの黄体ホルモンの成分はドロスピレノン、卵胞ホルモンの成分はエチニルエストラジオールです。
ヤーズフレックスはこの2つの合成女性ホルモンが28日分全て同じ量で配合されています。
ヤーズフレックス | ドロスピレノン (黄体ホルモン) | エチニルエストラジオール (卵胞ホルモン) |
1日目~28日目の錠剤(28錠) | 3mg | 0.02mg |
ヤーズフレックスの特徴
日本で初めての連続120日間服用可能の※LEP 配合剤(低用量ピル)
通常、低用量ピルは実薬が21錠、プラセボ(偽薬)7錠であることが多いのですが、ヤーズフレックスは実薬28錠で構成されています。
ヤーズフレックスは日本で初めて120日間連続して服用が認められているLEP 配合剤であり休薬期間を120日間設けないことで、生理時の疼痛を避けることができます。
(※「LEP 配合剤」も「低用量ピル」も同じ成分の錠剤を指します。「LEP 配合剤」は月経困難症などの治療目的で処方される薬剤の呼称であり、「低用量ピル」は避妊目的で使用される呼称です。ヤーズフレックスは避妊目的では処方されませんので、ここでは「LEP 配合剤」とします。)
月経困難症だけでなく子宮内膜症でも保険適応されるLEP 配合剤
以前より、ヤーズは「月経困難症」への効能が認められ、保険適応となっていましたが、ヤーズフレックスは「子宮内膜症」に対する効果も承認されています。
今まで日本には子宮内膜症に対する効能・効果で承認された LEP 配合剤はありませんでした。
そこで登場したのが、ヤーズフレックス配合錠なのです。
黄体ホルモンであるドロスピレノンの作用
ヤーズフレックスに含まれている黄体ホルモン剤「ドロスピレノン」は利尿剤である「スピロノラクトン」に構造上にており、弱い利尿効果があります。
そのため浮腫(むくみ)を軽減させる働きがあります。
また、ほとんどの黄体ホルモン剤にはわずかに男性ホルモン作用があるのですが、「ドロスピレノン」はほとんどありません。なのでニキビ治療にも効果があります。
「マーベロン」にもニキビ改善効果がありますが、どちらがよりニキビ改善に効果があるかというと、男性ホルモンの活性をより低下させる「卵胞ホルモン」が多く含まれている「マーベロン」のほうがニキビ改善効果があるといえます。
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「ヤーズ」と同じ成分なら、血栓症が不安という声も
低用量ピルを服用することで、血栓症になるリスクが上昇することが知られています。
特にヤーズフレックスと同じ成分である「ヤーズ」は国内で3例の死亡例があり、不安に思う方も多いようです。
低用量ピル(LEP錠剤)には「エストロゲン」という女性ホルモンが含まれています。この「エストロゲン」は血液を凝固する(固める)作用があるため、血栓症の発現頻度が高まるといわれています。
また、「ヤーズフレックス」に含まれる黄体ホルモン「ドロスピレノン」の作用に「利尿作用」があるのは先述の通りですが利尿作用で体内の水分が減り、血液が濃縮し血栓症のリスクがさらに高まる可能性があります。
そのため、低用量ピル全般に言えることですが、「ヤーズフレックス」を服用する際は、「血栓症」について知っておく事が大切です。
また、DHA・EPAのサプリメントは血栓症予防に効果があることが認められていますので、不安な方は摂取するのも良いでしょう。
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1日1錠、決められた時間に服用します。ピルは飲み忘れ厳禁です。
服用1日目~24日目までは、出血がみられても連続して服用します。
25日目以降120日目の間に3日以上の出血が見られた場合、服用を中止し、休薬期間を4日とります。(その間に消退出血が起きます)
そのあと、また服用を開始します。
飲み忘れを防ぐためには、毎日同じ時間に飲む、毎日行う行動と一緒に服用するなど(例えば夜の歯磨きのあと)工夫をしている人が多いようです。
また、服用はなるべく食後にすることをお勧めします。食後に摂ることで、胃腸への負担を軽くするためです。
ヤーズフレックスの破綻出血について
120日連続服用可能と言われていますが、120日の間3日以上の出血が1度も起きない場合は少ないようです。
多くの場合、それ以前に3日連続の出血(破綻出血)が起きます。
破綻出血とは、子宮内膜の維持ができなくなった時に起こるもので、内膜を維持するだけのプロゲストーゲン(黄体ホルモン)が不足し、エストロゲン(卵胞ホルモン)のバランスが崩れることで発生します。
通常の28日周期のLEP 配合剤(低用量ピル)は21日実薬服用後、7日間休薬期間をとるため、生理日(消退出血)がいつになるかわかりますが、ヤーズフレックスのように連続して服用し、破綻出血が起きてからの休薬期間の設定となると生理日がいつになるかわからないというデメリットがあります。
いつから、どのタイミングで飲み始めたらいい?
ヤーズフレックスを初めて服用する時は生理の初日に最初の1錠を飲み始めます。
また、生理初日から服用ができなかった(生理2日目以降7日以内)場合でも、服用を始めることは可能ですが、その場合避妊効果が低くなります。2週間はセックスを控えるか、他の避妊法を併用しましょう。
ヤーズフレックスは日本では避妊目的での処方はされていませんが、避妊効果を期待する場合、生理が終わった後(7日目以降)に服用を始めることはおすすめできません。
その場合体内で排卵の準備が行われている可能性が高いからです。
次の生理日を待って飲み始めましょう。
ヤーズフレックスは避妊効果があるの?それはいつから?
ヤーズフレックスは日本では月経困難症・子宮内膜症の症状軽減を目的としたLEP 配合剤として承認を受けているため、避妊目的での処方はされません。
しかし同じ成分の「ヤーズ」は外国で避妊効果を目的として製造・販売されており、きちんと決められた用法を守り服用することで避妊効果は得られるでしょう。
避妊効果は、生理の初日から1錠目を服用すれば、その日から得られます。
メカニズムを説明すると、女性の卵巣は、月経が開始すると、その時から次の排卵準備を始めます。
しかし生理開始から24時間以内の時点では、排卵準備はまだ本格化していません。
なので、そのタイミングでピルを服用することで排卵準備をストップすることができ、「その周期での排卵は起こらない」状態になります。
ピルの服用開始が生理初日となっているのは、そのためです。
しかし、生理開始から24時間以上経過してしまうと卵巣では排卵準備がスタートした状態になります。
ここでピルの服用を開始すると、排卵準備が落ち着くまでに時間が必要となり、確実に排卵をストップするのに2週間程度の時間がかかります。
しかし、この期間も生理2日目~7日目までです。
それ以降、8日目となると卵巣は排卵準備を完全にスタートしてしまっていると考えたほうがよいでしょう。
この期間にピルを服用し始め、2週間が経過してもコンドーム等の避妊手段をとらなければ妊娠する可能性があります。
ヤーズフレックスを飲み忘れたら?
気をつけていても、「飲み忘れてしまった!」ということは良くあると思います。
ヤーズフレックスは超低用量ピルに分類されるので、飲み忘れると不正出血や破綻出血がおきやすくなるので注意しましょう。
飲み忘れた場合の対処方法をお伝えします。
飲み忘れた場合(12時間~24時間)
毎日午後23時に服用していた人が、次の日の朝8時に服用するのを思い出した場合です。
思い出した時点ですぐに飲み忘れた分を服用します。
そして、その日の23時、その日の分を通常通り服用します。
1日に2錠飲むことになりますが心配はいりません。
飲み忘れた場合(24時間)
毎日午後23時に服用していた人が、昨日の23時にピルを服用していなかった事を次の日の23時に思い出した場合です。
思い出したときに、昨日の分と今日の分の2錠を服用します。
1日に2錠飲むことになりますが心配はいりません。
飲み忘れた場合(48時間経過)
2日間2錠、飲み忘れていることを3日目に気付いた場合です。
これには2つ方法があります。
そのまま1シート服用し続ける方法
気付いた時点で、昨日服用するはずだった分と、今日の分を服用します。
1日目の分は服用しません。要するに、1日分飛ばすということです。
消退出血(生理)を起こしたくない、または7日以上実薬を服用し続けていて避妊効果を持続させたいと考える人はこの方法を選ぶとよいでしょう。
しかし、ヤーズフレックスは超低容量ピルなため、不正出血を起こす可能性があります。
また、実薬を連続して服用した日数が足りないと、緊急避妊が必要となる場合があります。
下記をご覧ください。
【1】第1週に飲み忘れた場合
休薬期間または第1週に性交渉を行った場合には緊急避妊を検討する
【2】第2週に飲み忘れた場合
直前7日間に連続して正しく服用した場合には緊急避妊は必要ない
【3】第3週に飲み忘れた場合
休薬期間を設けず、現在のシートの実薬を終了したらすぐに次のシートを始める
参考資料:低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤のガイドライン(案)/日本産婦人科学会(平成27年3月): PDF」
実薬を1日~6日しか服用していない時に2日以上飲み忘れていて、セックスをした場合は緊急避妊を検討しましょう。
妊娠する可能性があるからです。
7日連続して実薬を服用していた場合は、そのまま上記の方法で1日分服用をとばし、1シート服用し続けて大丈夫です。
21日以上服用していて2日間服用を忘れていた場合は、2シート目を服用し始めます。
そのまま服用をいったんストップし生理をおこす
48時間飲み忘れた場合のポピュラーな方法です。
婦人科ではこの方法を推奨する先生が多いでしょう。
このまま、あと2日間服用をストップし、生理をおこします。
そして4日間の休薬期間のあと、残っている錠剤を服用します。